back number、1年半ぶりの新曲「エメラルド」。
この曲について、10月16日(金)の「ミュージックステーション」に出演した清水依与吏くんが、「『高嶺の花子さん』の主人公が年だけとって、まだうだうだ言ってるみたいな感じに近い」と語っていました。
「高嶺の花子さん」と言えば、手の届かない女性が、「夏の魔法とやらの力で僕のものに」ならないかなあ、という妄想の曲です。それから何年か経って、彼女はすっかり大人になったというのに、相変わらず僕の思いは届かずうだうだ繰り言を歌ってるってことですね。
「エメラルド」という緑の宝石は、まさに高嶺の花になってしまった彼女のイメージです。「スパンコールの雨」という比喩も、彼女の華やかさをよく表現してますね。
それにしても気になるのは、冒頭の「6秒間のキス」です。
曲を聴く限り、僕と彼女はそれほど深い関係にはなっておらず、とは言えキスをするくらいの親密さはあるようです。
ただし、「君と」ではなくて「君の」。彼女からの一方的な、されるがままのキス。
そしてそのキスは決まって「6秒間」。この微妙な時間が僕の心を揺さぶるんですね。
たとえば、2、3秒なら「友達以上恋人未満」という雰囲気になります。それはそれで辛いでしょうけど、この6秒にはもう少し深い意味がありそうですよね。
人間の呼吸は、だいたい1分間に12~18回が普通だそうです。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%BC%E5%90%B8%E6%95%B0)
ということは、1呼吸は約3秒から長くて5秒。つまり息を止めているとちょっとだけ苦しくなる時間が6秒です。
エメラルドのシャツを着た、誰よりも綺麗な彼女との幸福な瞬間。緊張で息もできないでいるけれど、呼吸しようと思った瞬間、彼女は唇を離してしまいます。
「思わせぶり」という言葉が適切かどうか分かりませんが、このとき「僕」は彼女の心をどう解釈していいか迷います。
それは「撫でるよりも丁寧に それでいて深い傷を残す」という言葉にもよく表れているでしょう。自分への愛情表現とは取れるけれど、僕が思うほど君は本気じゃないんだろう?という。
生身の君の正体を 夢見る僕の切なさよ
恋しいのさ 今君の未来は 誰のものなの
back number「エメラルド」作詞:清水依与吏
「芸術的なフォルム」というスタイル抜群の彼女ですが、僕はまだ「生身の君」を知りません。キスまでの関係からどうしてもその先には進めない壁があるようです。
「君の未来は誰のもの」、きっと僕ではないんだろうな。「恋しいのさ 溢れた台詞さえ 君の思うまま」、愛の言葉も君は受け流すだけだよね。「苦しいのさ 今その指先で とどめを指してよ」、この中途半端な関係ならいっそ・・・
「高嶺の花子さん」ではまだ遠かった彼女の存在が、少し近づいただけに逆に苦しさは増してしまったようです。
さて、いったい彼女はどういうつもりで「6秒間のキス」をしたのでしょうか?
撫でるよりも丁寧に
それでいて深い傷を残す
君の6秒間のキス
back number「エメラルド」作詞:清水依与吏
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