「組織にいながら自由に働く」(仲山進也)を読む

日々のこと

土曜の午前、楽天ブックスに注文したら翌日の昼にはもう本が届いた(早い!)ので、さっそく読んでみました。

ABD(アクティブ・ブック・ダイアログ)で概略は分かったつもりになっていたんですが、この「つもり」が怖いんですよね。やっぱり他の人が読んだ部分については、プレゼン(発表)だけを聞いて理解するわけですから、かなり穴、というか凸凹がありました。

そうは言っても、ABDをしていたからこそさらに深まる部分もあるわけで、この「つもり」感の危険性さえ意識しておけば、読書はより楽しいものになるのは間違いありません。

さて、「組織にいながら自由に働く」について。

目次

働き方は、「加減乗除」の4ステージで進化する。

これがこの本の中心テーマです。

  • 「加」 できることを増やす、苦手なことをやる、量稽古。仕事の報酬は「仕事」
  • 「減」 好みでない作業を減らし、強みに集中する。仕事の報酬は「強み」
  • 「乗」 磨き上げた強みに、別の強みを掛け合わせる。仕事の報酬は「仲間」
  • 「除」 一つの作業をしていると複数の仕事が同時に進むようにする。仕事の報酬は「自由」

仲山氏はこの4つの道のりを時間をかけて進むことで、最終ステージの「自由な働き方」が実現する、まあそれだけ時間はかかるのだと言います。

ABDでのお話でもそうでしたし、その後の懇親会でもその話題になりましたが、仲山氏は現在の自由な働き方、つまり「除」に至るまでにはまず最初の「加」、積み重ねが大事なことを強調されてました。

ところどころ印象に残った言葉を挙げて、私なりの感想を書いてみたいと思います。詳しくはぜひ本を楽天ブックスで買って読んでください( ^^)

「加」のステージ~「仕事=作業×意味」~

仲山氏は、あらゆる仕事は作業であり、その作業にどれだけの意味を見出しているかだとして、「仕事=作業×意味」と表現します。

自分にとって好みでない作業を減らして、好みの作業に置き換えていくというチューニングをしていこうと。

ただし、ここで大事なのは、最初から好みでないものを排除していくのではなく、まずは頼まれた仕事を選り好みしないでやってみる。そして作業単位で「好み」か「好みでない」かに分けるのです。

「ニガテ」と思っていることでも、実は「好み」であったり、「好みの作業」に寄せていくチューニングは工夫次第だと。

そしてニガテなことを深堀しておくと、それがやがて自分の「強み」になっていく。だからそれはむしろチャンスと捉えましょうと言います。

仕事の全体だけを見て好みでないと決めつけたり、やりもしないで判断してはいけないということでしょう。

「自分の考えと違う」「やりたいことをやらせてもらえない」と嘆く前に、ですね。確かに・・・

落ちている仕事は「気づいたもの負け」で拾う

この言葉も印象的でしたね。「気づいたもの負け」はいい意味です。

仕事をゴミに例えて、落ちてたら拾うほうが損だと考えがちだけど、長い目で見ればそうじゃない。

気づくとか気になるというのはほかの人にない視点を持っているということだから、自分の強みになる可能性があると。

だれもがやっていることでないところに目を向け、その仕事を引き受けていくことが、あとで生きてくるということでしょうか。

人には、目標達成型と展開型の2タイプがある

この言葉がまさに「目にウロコ」でした。

いままで、自分にも子どもたちにも、イチローばりに「目標の大切さ」を叫んできました。

目標があるからこそ、それに向かって人は頑張れるのだと。

ランニングに関して言えば、まさにそうです。月間300㎞とか、サブスリーとか目標を決めないと、練習もいい加減になりがちです。

でも、それを何にでも適用すると、苦しいのも薄々分かっていました。

たくさんの目標に縛られすぎて、どこを優先したらいいかや、頑張り方の程度問題も見えなくなりますよね。

まして、自分のことでなくほかの人が関わることだと、うまくいかないジレンマばかりが先に立つ。そして結局諦めたりするわけですが、そうすると挫折感や敗北感で終わってしまいます。

展開型は、そうではなく流れに身を任せて進んでいく。(「進んでいく」のが大事だと思います。)

「今ここ」を夢中で過ごす

それによって道が開けていく。

いや、今から目指すものはそれなんだろうな、と思いました。(ランニングは別ですが)

「減」のステージ

働き方の「加減乗除の法則」。自由に働くためのOSを自分にインストールする「加」のステージの重要性に触れました。

著書の現在の立ち位置があまりに自由なので、それだけ聞くと、もしかしたら「楽天のようなベンチャーだから自由になれたのだろう。そんなこと普通は出来ないよね。」などと思うかもしれません。

けれど、今に至るまでのプロセスを聞けば、これがどの職種であろうと核心は変わらないと感じます。

積み重ねの「加」から積み減らしの「減」へ。減らすもの、自由になるものは、

  • 「安定」
  • 「レール」
  • 「ルール」
  • 「評価」
  • 「許可」
  • 「びっしり詰まったスケジュール」
  • 「ロール(会社名、部署名、肩書き)」
  • 「お客様」
  • 「お金」
  • 「ニガテなこと」
  • そして「満員電車(混んでいる場所)」

が挙げられています。

そのひとつひとつに触れることはできませんが、特に共感したものは、たとえば「評価」からの自由です。

社内で評価されるようになると、逆に評価にしばられることになると。

お客さんには喜ばれるのに、上司には評価されないことをやると、「変人」と呼ばれるようになる。この「変人」をほめ言葉だと思えることが大事だと言います。

いや、これはよく分かります!

私自身が夜通し200㎞を走るレースに出たりするのですが、そういう人たちはお互いを「変態ランナー」と呼び合っています。

走る習慣のない人たちには信じられないであろうこの「変人」感覚が、まさにアイデンティティーでもあるわけです。

変な人という評価を受け入れてさえしまえば、やりたいことをやりやすくなる。

他者には「強み」として受け入れてもらえるし、自分自身のハードルも下がるメリットもある。ランニングに限らず、確かに仕事でも言えそうです。

それともうひとつ、これはスゴイ!と思ったのは、

許可を求めるな、謝罪しろ

「許可」からの自由の項目にあるこの言葉。米スリーエム社の行動規範だそうです。ここは引用しますね。

「ひたむきに仕事をすれば、深刻なダメージを受けることは多くない。みんなの許可を得るための時間的リスクに比べれば、間違えたときに謝罪するほうがよっぽどうまくいく。だから許可を求めずにどんどんやろう」--そういう考え方です。

いや、何でも「ホーレンソウ(報告・連絡・相談)」が大事だ!」と言われ続けてきて、まあそれもそうだけど何かなぁ、と思い続けて38年、まさに「この手があったか!」と思ってしまいました。

もちろん、何でもいいわけでなく、ここにあるように「ひたむきに仕事をすれば」という条件付きでしょうが。

よく分からない企画への許可を求められた上司は、責任が発生するので自分で決めきれずとりあえず却下となりがちだと。だったら自分の責任でやるほうがいい、それが上司のためでもある。

うーん、これはスゴイ転換です(;^_^A

「乗」のステージ

組織の中で「変人」と呼ばれるようになれば、それはその人にしかない「強み」を認められた証拠ということでしょう。

そうなれば「浮く」。組織を水中だとすれば、水面から顔を出した状態になる。するとそこで、価値観の合う自由人と出会いやすくなる。

「浮く」状態を「独創」とすれば、そうして出会った人とお互いの強みを掛け合わせて「共創」する。同時に自分の強みもさらに掛け合わせてオンリーワン性を高めていく。

これが仲山氏の言う「乗」のステージです。

著者は自らを「目標型」(ゴールを目指す)でなく「展開型」(流れに任せる)だとしていますが、そこには7つの作法がある、と言います。

  1. 夢中ゾーンのキープを目指しつつ、違和感を見逃さない
  2. ふだんから口頭やSNSなどで、「好みの情報」を発信しておく。
  3. 信頼する人からの頼まれごとは「はい」か「イエス」で答える
  4. 趣味の分野にしがみつこうとしない
  5. 流れの「意味」を考える
  6. 迷ったら、正しいほうよりワクワクするほうを選ぶ
  7. 収支を合わせる(やった甲斐があると思える状態にする)

なるほどな・・・と思いながら読んだのですが、正直に言うとこの作法についてはピンとこないものもあります。

それはたぶん、仕事の内容とかでなく、自分自身がこの「乗」のステージにまだ到達していない感じがあるからだと思います。

ランニングでは「変人(態)」でも、まだ組織では「変人」とまでは自他共に認められません(^_^;

展開型で生きてこなかったので、、「流れに乗る」と言われてもどこが流れがあるのか見えません。定年後、やっとこれから「乗」に行きたい、行こうとしている現状ですね。

が、「共創」の作法で参考にしたいなと思ったところがあります。

ひとつは、自分の目的、動機、価値観をさらすこと。そのなかで「文化」をつくるということは無敵だと。

そう、大概の目的は、ある人にとって好みでなかったり、意義を感じなかったりします。あるいは競合してしまって、パイの奪い合いや叩き合いになる可能性もある。

でも、「文化」にはそういう要素がありませんね。むしろなにか新しいものを作るというワクワク感があります。

既成概念や常識から抜け出て、新しい「文化をつくる」。いいですね!

それともうひとつは、自分の凹(弱み)をさらすこと

強みの掛け算が共創には必要だけれども、あえて弱みを見せることで、相手も凹をさらしてくれるようになりやすい。そして本音の意見のすり合わせが起こり始めると。

「自分の凹は他人の凸を活かすためにある」と考えるそうです。なるほど!

強がらずに自然体でつきあうことが大事ってことですね。

いずれにせよ、「乗」のステージで得られるもの、報酬は「仲間」。

今いる場所から飛び出すことで、新しい出会いが待っています^ ^

「除」のステージ~「つながり」を考える~

「除」。ここまできてやっと何にもしばられない自由な働き方にたどり着きます。

読んできて、仲山氏の造語、というか印象的なワードがたくさんありました。ちょっと挙げてみます。

  • 「難易度のチューニング」
  • 「たまごち(魂のごちそう)」
  • 「気づいたもの負け」
  • 「お客さんのプロ」   (以上「加」)
  • 「他由(自由の反対。他人に理由のある仕事)」
  • 「自己中心的利他」
  • 「ピーターさん(化)」
  • 「OBライン」
  • 「仕事のタイムラグ2年説」
  • 「余白の法則」    (以上「減」)
  • 「タンポポの綿毛理論」
  • 「どっぷり症候群」
  • 「滝の法則」      (以上「乗」)
  • 「ライフワークバランス」
  • 「際者(きわもの)」
  • 「出島・離島・衛生ステージ」(以上「除」)

いかがですか?聞いただけでは意味は分からないけれど、気になるワードばかりですよね。(詳しくは本書をどうぞ^ ^)

思うに、こうした言葉は、仲山氏がどこにいても絶えず新しい「何か」を考え続けてきたからこそ生まれるのだと思います。

その「何か」の中心は「つながり」だと考えます。

「ライフワークバランス」という言葉もそうですが、仕事も自分の生活もつながっている。

「会社と顧客」という関係でなく、お客さんともフラットにつながる。会社のウチソトの人間関係も同じ。仕事そのものもマルチタスクでなく、共通点を探してつなぐ。

すべての「つながり」を意識してきたからこそ、「加減乗除の法則」も生まれたのでしょう。

「穏やかなカオス」

最後の方で「穏やかなカオス」という言葉を引用されていますが、これもまた印象的でした。

仲山氏の仕事はこの「穏やかなカオス」をつくり出すことでもあり、そこから「余白」が生まれ、「異分子(変人・際者etc.)」が入り込み、そこから思いもよらない結果、ひらめき、イノベーションが生まれる。

それを計画されたセレンディピティ(偶然)と呼ぶそうです。

偶然が世界をつくり出す、という話題に以前触れましたが、その偶然を生むカオスを仲山氏はつくってきたとも言えそうです。逆説的ですが・・・

人生は「らせん階段」

「乗」のステージもそうでしたが、このステージも実感としてはなかなか自分に引きつけて考えられない箇所がいくつかありました。まだまだ「除」どころではありません。仲山氏のたどった道は見えてきませんね・・・

しかし、実際は「加」+「減」くらいで終わる人生のほうが多いのではないでしょうか。いや、それどころか「加」の途中で終わる、あるいはそこでずっともがき苦しんでいる人のほうがもっと多いのではないでしょうか。

「自由は面倒くさい」という言葉もありましたが、自由を得ても、それだけで幸せとは言えません。逆に自由でなくとも幸せと感じて一生を終える人もいるでしょう。「自由」がすべての基準ではありません。

けれど、硬直化した組織や慣習、因習でがんじがらめになった社会のなかで、「個」としての自由への渇望はますます強くなっています。これまでの常識が通用しない時代だからこそ、仲山氏の働き方から見習うことがたくさんあるはずです。

仲山氏は、働き方のゴールとして今目指す境地は、「自分が関わる人たちはなぜかうまくいくけれど、たまごち(自分が「ありがとう」と感謝される喜び)をもらうことはない」という「何もしてない風」のスタイルだそうです。

そしてそれはらせん階段が2週目に入るような、新しい「加」のステージだと。

ABDのあとの懇親会でもさまざまな話題が出たのですが、ひとつはっきり覚えているのは、この「らせん」の話です。

加減乗除は順に進むステージだけでなく、らせん状にぐるぐる回る。つながっている。

だからこそ、「変わり続ける」ことが大事なのでしょう。

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