江戸時代になって印刷の技術が進むまで、日本の書物は「写本」と呼ばれる、書き写しのものでした。
「見せ消ち」というのは、文字に線を引いたりして訂正するわけですが、あえて前の文字が分かるようにすることです。(「けち」は動詞「け(消)つ」の連用形。)
消されたもとの表現が、何らかの意味や印象を感じさせます。
「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」という藤原定家の歌は、この「見せ消ち」が、ないはずの美しい花や紅葉を印象づけていますよね。
back numberの曲には、この技法が使われてるな、と思う歌詞がいくつかあります。
たとえば「ハッピーエンド」です。
今すぐに抱きしめて私がいれば 何もいらないとそれだけ言ってキスをしてなんてね 嘘だよ ごめんね
私をずっと覚えていてなんてね 嘘だよ 元気でいてね
今すぐに抱きしめて
出典「ハッピーエンド」作詞:清水依与吏
私がいれば 何もいらないと
そう言ってもう離さないで
なんて 嘘だよ さよなら
本当の気持ちは「嘘だよ」というしかない…あまりに切ないです。
「クリスマスソング」も同様です。
できれば横にいて欲しくてどこにも行って欲しくなくて
僕の事だけをずっと考えていて欲しい
でもこんな事を伝えたら格好悪いし
出典「クリスマスソング」作詞:清水依与吏
はしゃぐ恋人達は
出典「クリスマスソング」作詞:清水依与吏
トナカイのツノなんか生やして
よく人前で出来るなぁ
いや 羨ましくなんてないけど
実生活なら優柔不断な感じもするでしょうが、恋愛に関してはまさに共感しますね、この男心(^_^;)
いずれにせよ、言いかけてすぐそれを否定するこの「見せ消ち」が、詞の奥行きを作っていて、うまいなあと思います。
他にもたくさんありますが、また次回に^ ^
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