3年生最後の授業は「想い」と「言葉」

教育

今日は1月31日。(「愛妻の日」らしいです) 3年生は明日からいわゆる自由登校日になります。

私大の入試はもう始まっていますが、これからがピーク。国公立の前期試験、センター推薦(センター試験の結果と面接などで合否を決める)などもあり、生徒が学校に来られる日ももうわずかになりました。

そんなわけで今日は3年生最後の授業日です。

もうすでに進路が決まった子、国語を入試科目としない子、いろんな生徒が混在しているので、このところの授業は質問があれば対応するくらい。ほぼ自学自習の時間でした。

でも、やはりこのまま終わるのもなんか寂しいので、受験生の息抜き程度、最後の授業をやることにしました。

ラスト15分だけの「国語」の授業です。

ミスチルの「しるし」を教材に

まず、「超イントロ当てクイズ」でMr.Childrenの「しるし」を流します。2006年発表なので、生徒はまだ3~4歳くらいのときの曲。それでもさすが名曲、ドラマの主題歌だったこともあり、半分以上は知っているようです。

なので、ほんのちょっと流しただけですぐ、ひとりの男子が勢いよく手を挙げてくれました! もちろん正解です!^^

長い曲なので、最初の2フレーズくらいを聴いて、ここに出てくる2人の関係を考えてもらいました。

最初からこうなることが決まっていたみたいに

1違うテンポで刻む鼓動を互いが聞いてる

どんな言葉を選んでも どこか嘘っぽいんだ

2左脳に書いた手紙 ぐちゃぐちゃに丸めて捨てる

Mr.Children「しるし」

さて、2人は今どういう状態なのか?

付き合い始めて、これからもっと深い仲になっていこうとしているのか?

それとも、もう別れが近いのか?

曲を知っている生徒も、あまり深くは考えたことがないみたいです。

何人かで話し合いながら、傍線部の答えを考えていますが…

数分後に聞いてみると、ほぼ8割の生徒が「別れ」のシチュエーションだと答えます。

たぶん、「違うテンポで刻む鼓動」は、お互いが気持ちのすれ違っているイメージなんでしょう。

でもこの歌詞はどちらとも取れるんですよね。

「違うテンポで刻む」をどう取るか?

鼓動、心臓のリズムは人それぞれで、違うのが当たり前。

でもその違うテンポを確認するためにはどうしたらいい?

「となりの人の心臓の音を確かめてみて」と言うとみんな笑います。

そう、身体を寄せ合わなきゃ鼓動は聞こえません。

そんな近い関係になれたことを、言葉では言えないくらいうれしく思ってる。

そんな風にも取れるんじゃない?と。

「ストーリー」よりも人の「想い」

桜井氏は、この曲で描こうとしたことについてこう語っています。

メロディーが先にあって、ここに載せるのは何より「想い」だと。

だから物語はどちらとも取れてよくて、描かれるふたりの想いが伝わればいいのだと。

日本テレビ系ドラマ『14才の母』主題歌。 演奏時間はMr.Childrenのシングルでは最長の約7分12秒。 桜井はこの曲について「両極の物語の中心にある『愛』とかいうもの、それを実感してもらえたらと願っています。最高のラブソングができました」とコメントしている。 歌詞について桜井は、恋愛中の男女のこととも別れてしまったカップルのことともどちらにも解釈できるものにしたと語っている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

そんな種明かしをしながら、言葉の深さを考えてもらいました。

(「しるし」の歌詞分析についてはこちら↓)

https://penta-3.com/2019/06/05/shirushi1/

「左脳に書いた手紙」

どんな言葉を選んでも どこか嘘っぽいんだ

左脳に書いた手紙 ぐちゃぐちゃに丸めて捨てる

Mr.children 「しるし」

この曲を初めて聴いた時、ここをよく聞き取れなかったのですが、「左脳」なんですよね。

歌詞の中に「左脳」なんて言葉を入れられる…すごい衝撃でした。

生徒に聞いても、この部分の心情はなんかピンと来ないようです。

左脳と右脳の違いを知らなければ分からない

歌詞もそうですが、小説などの心情を読み取る文章でも、評論と同じように実はいろいろな予備知識が必要だったりします。

だからセンター試験でも古い小説が出題されるときは、当時使われていて今は消滅してしまったモノや言葉に、必ず注釈がつけられます。

でもそれで意味が分かったとして、それが小説の中でどういう役割を果たしているかを理解するには、もうひとつステップアップが必要です。

文章を読むスキルというのもありますが、その前提となるバックボーンの部分が重要なんです。

(「バックボーン」を「背骨」と訳せたとしても、それだけじゃこの文の内容も分かりませんよね。)

専門的な知識というより、なんとなく知られている「左脳」と「右脳」の働きの違い、そこに視点を向けられるかどうかなんですが、左脳に書いた「手紙」という二重の比喩になっているからまた分かりにくいんだと思います。

しかも「左脳で」でなく、「左脳」。この「に」によって「右脳」が示唆されています。

「に」は「何々から何々に」という方向性を示す助詞ですから、「から」の前に来るのは対比的に「右脳」しかありません。

感情をつかさどる右脳感じた自分の想いを、論理をつかさどる左脳伝えようとする。

でもやっぱりうまく言葉にならなくて、もうぐちゃぐちゃ。

「手紙」を「丸めて捨てる」という表現で、僕の想いがすごく視覚的になって伝わります。

そこを即座に読み取れる生徒は少ないですかねー

しかもじゃあそれが分かったとして、そこで僕が伝えたい言葉っていったい何なんだろう、とまた考え込んでしまうんです。

「想いが言葉にならずもどかしい気持ち」とまでは理解しても、その先です。

別れを告げよう、告げなければいけないという想いを伝える適切な言葉が見つからないからもどかしいのか。   

愛しているという強い思いを伝える適切な言葉が見つからないからもどかしいのか。

「左脳」「手紙」という比喩に続き、第3の謎解きです。

簡単にわからないからこそ深くて面白い

「国語」というとどうしても「答えがはっきりしない教科」「説明されてもモヤモヤが残る教科」「そもそもどう読んでも個人の自由なのになんで一つに絞ろうとするのか意味不明な教科」という評判?が多いです(^ ^)

敢えて否定せず、いやいやだから深くて面白いんだよと言っても、なかなか…ですけどね。

「沈黙の歌」という表現も、「『半信半疑=傷つかない為の予防線』」という表現も、すごくうまくて、分かる人にはすぐ分かるのに、そうでないとずっと考え込んでしまいます。

(=をひらがな3字で言い換える、という問題も、けっこう難問のようです。解答例は「という」)

授業では、この「鼓動」と「左脳」という表現を中心に考えてみましたが、面白いと思った生徒は、もう少し全体をじっくりやりたかったみたいです。

「もっと早くからこういう授業やりたかった」と言ってくれるんですけど、内容も進度もみんなで合わせなきゃいけないのが学校ですからね。

そういう気持ち、「微妙なニュアンスで」「示そうとしている」のですが(^^;

(「しるし」の歌詞分析について詳しくはこちら↓)

https://penta-3.com/wp-admin/post.php?post=626&action=edit

最後にもう一つ

ミスチルの「しるし」は、恋愛中の男女の曲とも別れの曲とも取れる、ということを知って、生徒は驚いたようです。

曲をよく知っていた生徒の方が驚きは大きいでしょうね。

そんな種明かしをしたところで、授業の残り時間あと5分。もう1曲、イントロ当てクイズです。

「灰色と青」(米津玄師+菅田将暉)

「しるし」はかなり前なので、今度は最近の、みんな知っているはずの曲で。

2017年10月リリース。カラオケで歌ったとき「本人映像」だったのですが、思わずそちらの方に見とれてしまいました。ふたりの雰囲気とこの曲が見事にマッチングしています。

予想通り、授業でこの曲を流した瞬間、さっと反応した生徒がほとんどでした。でも米津玄師とはわかるんですが、曲名は意外とてこずるんですよね。「lemon」とか。

「灰色と青」と分かったところで歌詞を配ってまた考えてもらいます。

タイトルの灰色と青は、それぞれ何の色だろう?

「青と灰色」ではない理由

この曲はよく知っていて、何となく歌詞の意味も分かっている生徒も多いようですが、改めてタイトルの意味を答えるとなると、そう簡単ではありません。

「青」=無邪気で明るくすべてに前向きだった子どもの頃

「灰色」=大人になった今の、辛く苦しく退屈な日々

と、とりあえずこんな感じなのでしょうが。

でも、時制的にはむしろ「青」が先のはず。なぜ「青と灰色」じゃないんでしょうか?

そう言われると、もう答えられませんね。もちろん正解がある訳ではないので、考えるきっかけとしてだけの問いかけなのですが。

歌詞の中にこういうフレーズがあります。

どれだけ無様に傷つこうとも

終わらない毎日に花束を

ここが手掛かりになりそうです。

大人になって平凡で退屈な毎日を過ごしていると、何かに夢中になり、すべてが上手くいくと思えた子どもの頃の気持ちを失ってしまった気がする。

でも、この「終わらない毎日に花束を」=辛く苦しいことの多い今の生活であっても、そこに幸せや喜びを見つけ出したい。

どれだけ無様であっても、あの頃の「想い」だけは忘れずにいたい。

今という現実は確かに灰色かもしれない、でもだからといってあの頃に戻るのではない。

つまらない現実の中に、きっと喜びがある。あの頃の想いを忘れなければ。

だから最初に来るのは今、「灰色」なんでしょう。

現実から逃避して過去に引き篭もろうとしているのではない、過去の自分に戻って今の自分を勇気づけよう、そんな前向きな姿が浮かび上がります。

「すれ違うように君に会いたい」〜もうひとつの気づき〜

そう話しながら、ふと気づきました。

歌詞の終盤、「すれ違うように君に会いたい」という箇所があります。この「すれ違うように」ってどういうことなんでしょう。

この「君」は、子どもの頃の親友と解釈していたので、ちょっとイメージがしにくかったのですが。

もしかしたら、ここでの「君」は友達じゃないのかも。

あの頃の自分?

過去の自分に戻るんじゃない、すれ違うように会って、あの頃の想いを取り戻したいんだ。

そんな風にも思えてきます。

いつも心は「青」でありたい

今、みんなは何色だろう。

受験真っ最中の人にとっては、灰色かもしれないね。

でも色は心の持ち方できっと変わるんだよ。自分の想いを大事にして、青色の世界にしていってくださいね。

…というところでチャイムが鳴って、授業はおしまいです。

言葉の奥深さ、面白さも少しは伝わってくれてたらいいけれど^ ^

(「灰色と青」の歌詞分析についての記事はこちら↓)

https://penta-3.com/2019/10/02/haiiro-to-ao/

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